Web Master Interview the Editor of Japan Version !
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いざ評論社! 日本版刊行の
いきさつ
イラストについて 本ができるまで
(編集作業)
その他
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「クロニクル千古の闇」シリーズ第3巻の発売間近の2007年4月6日、
管理人は無謀にも日本版を出版する評論社へ突撃取材に行って参りました!

編集作業も大詰めの大変お忙しい中、担当編集のOさんにとてもご丁寧な対応を頂き、
色々と貴重でおもしろいお話を聞かせて頂くことができました!


…例のごとく長くて重いページですみませんが、楽しんでいただければ幸いです。
いざ評論社!
以前から、取材に伺いたいと無理なお願いをしていたのですが、
せっかくならば3巻『魂食らい』の編集が進み、発売する前くらいのタイミングでどうでしょうと提案いただいていました。
管理人の都合の関係で、予定していたよりも若干早めの4月6日金曜日に評論社へ伺うことになりました。

←↓ 評論社さんのすぐ近くにある神社。
約束の時間まで少しあったので立ち寄ってみました。
桜がまだまだ綺麗でした。

午後、約束の時間に評論社さんへ行くと、社屋のショーウィンドウが『魂食らい』な飾り付けになっていて感激!

おぉ!と思わず声を上げそうに(恥)

正面から見るとこんな感じ。(本はまだ出来上がっていないので、中身はダミーです)

うきうき気分で評論社の扉を開け、いよいよ内部潜入?!
少しすると、なにやら色々と重たそうなものを抱えた編集のOさんがいらっしゃいました。
この重たそうなものについては後ほど。
「さて、何からお話しましょうか」と、いよいよインタビュー開始。
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「クロニクル千古の闇」を出版することになったいきさつを教えてください
評論社は、ファンタジーの名作であるJ.R.R.トールキンの『指輪物語』の日本版を刊行しています。
20世紀を代表するのが『指輪物語』ならば、21世紀にはどういった作品を刊行するのがいいのか。
ぜひとも骨太のファンタジーを出したい、とふさわしい作品を探していました。

本を刊行するにあたって、どのような作品があるのかをエージェントに紹介してもらっているのですが、
そのエージェントより、2003年のフランクフルトブックフェアーで話題になった作品を紹介されました。
それが、まだ本国英国でも出版される前の'Chronicles of Ancient Darkness'(「クロニクル千古の闇」)シリーズでした。
「クロニクル千古の闇」がファンタジーとは原作者が思っていないことをあとで知ることになりますが、
大きく分類すればひとつの作り上げられた世界で、その世界の住人を主人公に物語が進んでゆく
「指輪物語」的ファンタジーに分類できると思います。

まだ出版される前だったので、シリーズ6冊の概要と、
1巻"Wolf Brother"(『オオカミ族の少年』)の7章までが書かれた冊子を受け取り、
評論社の絵本やファンタジー長編なども担当していただいていた
さくまゆみこ先生にこの冊子の翻訳をしていただきました。
翻訳をさくま先生にお願いしたのは、
21世紀を代表する作品を、実績のある確かな方に訳していただきたかったからです。

そして、この作品は今日のファンタジーと何かが違うと感じたこと、また、大手出版社であるOrion社が
自社で出版する前からこの作品を広めようとしていることもあり、どうしても評論社で権利を手にしたいということになりました。
そして、日本版を出版する権利を得ることができました。

エージェントから受け取った資料。
6巻の概要や物語世界、登場キャラクターの紹介などが書かれています。

実際物語を書き進むうちに大まかな流れは変わらずとも作者の構想が変わることもよくあるとか。
この資料には3巻にベイルが登場し、3巻でのレンの役回りを彼がするはずだったことが記されています。
これからの楽しみのためにも、かなり変更がされるということもあり、
(あと英語だったこと!)4巻、5巻の概要は読まずに帰ってきた管理人でした。

資料には第1巻"Wolf Brother"(『オオカミ族の少年』)の7章までが紹介されていました。
そこには上のようなイラストが載せられていました。
決定稿(英国版表紙はこちらのページ参照)よりも「児童書」的な表紙な気がします。
個人的にはこれもありかな、とは思いますが決定稿にして正解でしょう。
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なぜ日本独自のイラストを使うことになったのですか
「クロニクル千古の闇」を刊行することが決まり、編集、翻訳、デザインの3者で会議が行われました。
編集としては英国版の洞窟壁画のような表紙イラストや縦長のデザインを気に入っていて、
そのまま使いたいと思ったのですが、2巻以降は変更になる可能性があったことなど問題を抱えていました。
英国で仮に2巻以降のイラスト担当者が変更になっても評論社が独自に1巻の担当者と契約をして
一貫性のあるデザインにする、という案も出たのですが、表紙と本文イラストの担当者が明記されていなかったこと
そして、日本のデザイナーから「この表紙では、日本の書店に並べるには縦長すぎて他の本に埋もれてしまう、
また日本ではどの層をターゲットにした本かわからず、おそらく大人しか手に取らないであろう」といわれました。
「クロニクル千古の闇」は、やはり子供やヤングアダルトを対象としたいと考えていたので、
日本独自のデザインにし、独自のイラストレーターを探すことになりました。

どのようにして酒井駒子さんに決定したのですか
独自のイラストレーターを使うと決めたまでは良かったのですが、
実際誰を起用するか、なかなか良い案が出ずに悩んでいました。
ところがあるとき、ふと酒井駒子さんの名が頭をよぎり、提案してみると、
一同がすぐに納得し、お願いすることになりました。
酒井さんしかいない、という状況になったものの、このときご本人はこのことを全く知る由もない状態で、
断られたらどうしたらいいのかと不安にも思っていました。
しかし、酒井さん以外には考えられなくなっていたので、酒井さんに断られたら刊行しない、
いや、断られることは考えないという意気込みで依頼しました。
酒井さんからは、「自分が描ける世界か、読んでから決めさせてください」といわれ、
その後了承を得ることができました。
あまりの嬉しさに、正式にお願いに上がるとき担当編集1人で行ってもいいところを、
編集部全員-と言っても3名ですが!-でお伺いしてしまいました(笑)


イラストについて他におもしろいエピソードはありますか
酒井さんレベルの方になると、レイアウトなど、1からお任せしています。
そして、イラストが上がってきて内容を確認するのですが、
翻訳のさくま先生もこの作品に大変入れ込んでいるので、イラストの内容をチェックされています。

1巻では表紙のトラクの髪の色が金髪に見えるため、
「本当は黒髪なのに、子供が金髪だと思ってしまう」と心配されたさくま先生が黒にして欲しいとおっしゃいました。
ただ、1巻はどうしても暗い背景にしたかったので、その場合髪を黒くしてしまうと背景に沈んでしまうので
そのままの色で行くことになりました。
もし読者の方から「髪の色がちがう」とご指摘を受けた場合は
「焚き火の光が反射しているんです」とお答えしようということになりました。
(管理人は思わず「でも金髪だと思ってる読者の方、多いですよ」といらぬツッコミを入れてしまいました・笑)


1巻31章では、本文挿絵に手斧が描かれていますが、
当初は今日、私たちがイメージする形の斧が描かれいてました。
しかし、どう見ても石器時代の斧に見えない、青銅器時代以降の形であるとさくま先生よりご指摘をいただき、
酒井さんに直していただいたこともあります。

酒井さんもイヌイットの資料などを基に、サケの干し方など細かい描写をされています。

このようにして日本独自のイラストを採用していますが、
酒井さんのイラストに惹かれて購入したと言われる方も多く、
また10歳くらいの子が「イラストが綺麗で、ページをめくるのが楽しいです」と
感想を寄せてくださったときは「こんなに小さな絵なのに!」と感動しました。
やはり酒井さんにお願いしてよかったと思います。
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英語版の原稿が上がってから、日本版刊行までの流れを教えてください
ミシェル・ペイヴァーさんによる英語版の原稿が上がると、エージェントよりメールにてそのデータが送られてきます。
それを翻訳のさくま先生にも送るのですが、その後英語版の内容が変更になることが多々あるので
校正などを経て英国版の決定稿が出た後、そのデータを受け取ってから翻訳をはじめます。
固有名詞の発音に関しては、イアン・マッケラン氏による英国版朗読CDを参考にされているようです。

さくま先生の翻訳原稿が上がると、編集部3名、外部の英語のできるスタッフなどでその原稿を読み、
気付いたことなど、さくま先生に確認をとります。
分からない単語などがあれば、はじめは原語のまま表記し、
さくま先生が原作者のペイヴァーさんに詳しいことを聞いてから訳します。
今回も普通に使われているのとはちがう意味で使っている単語がありました。

この作業を2〜3回繰り返します。2回目、3回目になると、編集部で校正をするのは担当編集1人になります。

さくまさんの細かい質問に対する、ペイヴァーさんの細かい回答。


Oさんが抱えてきた重そうな束!校正をするために刷られた「ゲラ」。
何kgにもなるので、大変!だそうです!


一番上は3巻『魂食らい』訳者あとがき。色々赤が入ってます!
ゲラをイラスト担当の酒井さんやデザイナーの方に読んでいただき、イラストやデザインを決めていきます。

デザインについて、各巻の表紙上部、シリーズ名の背景のカラーはすでに6冊とも大体デザイナーが決めてあり、
酒井さんにも伝えてありますが、そのことにより酒井さんのイマジネーションの妨げになることは避けたいので、
カラーを変更する可能性もあります。

表紙のイラストは前述の通り、酒井さんレベルの方には全てお任せしているのですが、
酒井さんはとてもきちんとされている方なので、ラフを送ってくださったり、
ラフをボツにする際はその理由も教えてくださいます。
例えば、今回の第3巻『魂食らい』の表紙は当初レンになるはずでした。
ラフを見るとレンの表情がとても素敵で編集は気に入っていたのですが、
酒井さんは、「弓を持ち、パルカを着込むレンがどう描いてもスキー客にしか見えず、
トラクを描いてみたらしっくりきたので今回は表紙をトラクにします」と、今回の表紙になりました。
(管理人もラフを見せていただきましたが、とても素敵なレンでした!権利の関係上載せられないのが残念です…!)
レンが表紙の段階では裏表紙はトラクとウルフだったのですが、
トラクが表紙に来たので裏表紙はホッキョクグマになりました。
残り3冊のうち1冊はレンを表紙にしたい、と酒井さんはおっしゃっているので楽しみにしていてくださいね!

表紙の題名はいつも白抜きにしていましたが、今回は雪が表紙に来そうということで、
デザイナーが今回は白抜きではない文字にすることにしました。

酒井さんの原画が仕上がると、デザインとともに今度は色校正に出します。
とてもきれいな色が、なかなかうまく出ないのが残念です…!
(管理人、3巻の表紙と挿絵の原画も見せていただきました。
原寸で描かれていて、表紙はとてもきれいな色で塗られていました。
これも権利の関係上掲載できなくて申し訳ありません!)

表紙デザインの色校正。

色校正の段階で作られるダミー。
(プリンタ出力のようです)
小さくてかわいい!
(携帯とその大きさを比べてみてください!)
実際の帯の色はもっと明るいオレンジです
(ショーウィンドウ参照)


初版に挟みこまれるポストカードの色校正。
その後、原稿を印刷所に出します。

ポスターや予約票が出来上がり、それを営業に渡して書店さんにおいてもらいます。
そして、出来上がった本が流通を通し、書店の店頭に並びます。
お待たせしている第3巻『魂食らい』は早ければ4月26日に書店でお目にかけることができそうです!

ちなみにオリジナル版が出てから日本版を出してはいけない期間というものはありません。
英国版と同時に刊行できればそれが一番なのですが、なかなかそうもいかず、お待たせして申し訳ありません。

第3巻『魂食らい』のポスター。
今回、コピーから「ファンタジー」という言葉を抜いたそうです。


左の『生霊わたり』ポスターには確かに「ファンタジー」の文字が。

こちらには「ファンタジー」の表記が残っています。
4月26日頃発売予定の『魂食らい』。こちらが書店においてある予約票です。
普通予約票は1色刷りで作っているそうですが、「クロニクル千古の闇」シリーズはフルカラー!
「力を入れていますよ!」と担当編集のOさん。
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校正の他に、編集さんのお仕事には何がありますか?
これは1巻のときだけになりますが、
本文の紙の質や色、1ページあたりの行数や文字数などを決めるのも編集の仕事です。

そのほか、表紙の紙や帯の紙も決めます。
帯の紙は『オオカミ族の少年』と『生霊わたり』の時にはラメの入ったような特殊な紙を使いましたが、
印刷がこすれ易いなどの問題がおき、3巻は違う紙にしています。
表紙の紙は「羊皮紙」という紙を使っています
(管理人註:昔使っていた本当の羊の皮ではなく、それに似せて作られている紙です)。
マーブルのような模様が入っているので、一冊一冊出来上がりが違うんですよ!


帯の色やデザインについて、イメージを大事にする編集と、
店頭でお客さんに本を手に取ってもらいたい営業とでよく意見がぶつかります。
帯の色も、もっと派手な赤にしろと言われたのですが…。
他にも、3巻の題名『魂食らい』を『魂喰らい』(口へんがついている文字)にして欲しいと言われましたが、
1、2巻ですでに登場している言葉を今更変更できないと反対しました。

編集の仕事には他に、ポスターやチラシ、帯に使うコピーを考えたり、
マスコミ用や営業に書店に持って行ってもらう「リリース」を出すことがあります。
これらについては、作者の考えたものではなく、自分たちが考えるものなので非常に苦労します。
コピーやリリースが正しいのか、フタを開けてみないとわからないこともあるからです。
例を挙げると、多くの方に本を手にとってもらうためもあり、シリーズ刊行開始当初は
「大型ファンタジー」という言葉を大々的にコピーに入れてきましたが、
昨年のペイヴァーさん来日の際に作者本人がこのシリーズをファンタジーだと考えていないと知り、
それ以来ファンタジーという言葉は極力使わないようにしています。


読者からの反応で驚いたことなどはありますか
「クロニクル千古の闇」シリーズは、刊行前想定していたターゲットが小学校高学年くらいの子供だったのですが、
『オオカミ族の少年』が刊行された当初は高校生以上の方からの反響が大きく、驚きました。
巻を経るごとに小中学生の方からもたくさん読者カードを頂くようになりましたが。
ちなみに評論社で刊行している「ロアルド・ダール コレクション」は
当初のターゲットが大人の方だったのに、お子さんからの反響が大きく、両シリーズで逆転現象が起こっていました。

このシリーズには70代、80代の方からのコメントも頂いております。
シリーズ新刊の発売日が決まったらすぐに教えてください、とおっしゃる50代の方もいらっしゃいます。
大変ありがたいことです。

シリーズに対する感想は、小中学生と大人の方では違っているようです。
大人の方、特に年配の方は「忘れていた自然との共存を大切にしたい」と言われる方が多く、
お子さんは「トラクやウルフたちと一緒に冒険がしたい」とか、「トラクに勇気をもらった」と言う子が多いですね。

ご苦労は色々とあると思いますが、特につらいことはありますか
編集をしていると、その本を刊行しなければいけないという現実があるために作品を純粋に楽しめなくなってしまいます。
だんだん感覚が麻痺してきて、「この作品は確かに優れているけど、本当におもしろいのか」と自問することもよくあります。
編集長と2人で、「ねぇ、これっておもしろいの?」と叫んでいたりもします(笑)

出版社の方にはあまり関係ないと思いますが映画化に関して少しお伺いしてもよろしいでしょうか
映画化に関しては、話が進んでいないようでやきもきしています!
映画に関しては映画配給会社が権利を持つため、
出版社としては、映画化をしても関わるのは依頼されれば「ロード・オブ・ザ・リング」の時のように字幕監修や、
パンフレットに少し関わるくらいだと思いますが、「クロニクル千古の闇」シリーズの映画化是非にも実現して欲しいですね!


お約束ですが、最後に読者の方にメッセージをお願いします
お待たせして申し訳ありませんが、シリーズ完結まで気長にお付き合い下さい。
新刊の刊行情報や、映画化情報については情報が入り次第当社公式サイトにてお知らせいたしますので
宜しくお願い致します。

と、いう具合にとてもご丁寧に対応いただきました!
インタビュー後も個人的な犬談議や映画談議などに花が咲き、正味3時間ばかり拘束してしまいました…。
(Oさん、本当に有難うございました!評論社の皆様、お邪魔致しました!)

少しでも皆様にも楽しんでいただけたなら幸いなのですが・・・!

↓オマケ


編集さん曰くウルフ(奥)とその嫁(手前)のぬいぐるみ(笑)
今後、ウルフにもオオカミの家族ができそうだとのこと!どうなるか楽しみです!
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